クライミングには3つの力が必要になります。
瞬発系能力、持久系能力、回復系能力の3つです。
保持力を分解して、それぞれの要素に分けるとこの3つに分解することが出来ます。
今回はそれぞれの違いとトレーニング方法についてお伝えします。
瞬発系能力
ランジやコーディネーションなど、ボルダリングには一瞬の爆発的な力を必要とする場面が多く登場します。
また、強度の高いポイントが連続する時や、デッドしなければならないポイントが続く時もあり、そのようなシーンで重要になるのが瞬発系能力です。
コンマ数秒から2、3秒程度のごく短い時間に、力を出し切ることが重要となってくる能力です。
持久系能力
ルートクライミングの時や、ボルダリングでもコンペや連続して課題を登りたい時に重要になってくる能力です。
陸上競技にある様な、短距離が瞬発系能力で、長距離走が持久系能力とイメージするとわかりやすいでしょう。
回復系能力
休憩をはさんで登りたい時や、1日以上レストを挟んで疲労から回復させる能力の事を回復系能力と呼びます。
コンペの時に、予選、準決勝、決勝があり、更にそれぞれのラウンドの中で課題と課題の間に休憩をはさむため、その間にどれだけ疲労から回復できるかが需要になってきます。
クライミングの種類によるそれぞれの能力の重要性
上で説明した3つの能力は行おうとするクライミングの種類によって、求められる能力が異なります。
その比重を示したものが上記の表です。
スピードクライミングは15mの壁を飛ぶように5秒から9秒で登らなくてはならないため瞬発系の能力が最も重要になってきます。
そして、ボルダリング、ルートクライミングになるにつれて、瞬発系能力の比重が小さくなっていき、持久系能力、回復系能力が比重が大きくなっていきます。
スピード、ボルダリング、ルートクライミングの中で最も身近なのはボルダリングですが、多くのボルダラーが瞬発系能力ばかりを重要視して、その他の能力を向上させるためのトレーニングはあまりしていません。
短距離走の速度で長距離を走り抜けることが出来ないのと同じように、強度の高い課題を休憩せずに登りきるボルダリングは1トライ30秒から1分が限度でしょう。
そのため、1分を超えるような手数が多い課題には持久系能力が必要になってきます。
手数が短い課題は良いが、手数の多い課題は苦手の場合は持久系能力が低く、休憩を挟んでもすぐにヨレてしまう場合は回復系能力が不足している事になります。
つまり、ボルダリングメインのクライマーも持久系と回復系能力をトレーニングする必要があるという事になります。
それぞれの能力のトレーニング方法
上達してくると、それぞれの能力もそれなりに向上してくるものだが、個別にトレーニングした方が効率が良いでしょう。
現在の自分に足りない能力を探して、それを補うようなトレーニングをする必要があります。
上の表をみて分かる通り、回復系能力は低負荷で長時間クライミングするのに対し、瞬発系能力になるにつれて、より高負荷で短時間のクライミングに切り替わります。
この表は、筋力トレーニングのRM法というトレーニング方法に沿って構築されています。
RM法というのは、以下の表のように目的に合わせて負荷と回数を調整するというもの。
目的 | 負荷 | 1セットの回数 |
最大筋力のアップ | 100%~87% | 1回~5回 |
筋肥大 | 85%~67% | 6回~12回 |
筋持久力 | 65%~60% | 15回~20回 |
トレーニングのプランとしては、クライミングを長期間休んでいた時や、怪我から復帰した時等は、負荷の軽いトレーニング「回復系トレーニングのローカルエンデュランス」から始め、徐々に体の回復力を高めてから高負荷のトレーニングに移行するのが一般的です。
体がなまっている時に、突然後負荷のトレーニングをしてしまうと怪我の恐れがあることから、低い負荷を長時間かけ続けるトレーニング方法が有効です。
この回復系トレーニングのローカルエンデュランスについては以前の記事でも紹介しましたので参考にしてみてください。
最後に
回復系のトレーニングをすると、毛細血管が発達して血流が増大します。
すると、細胞と血液間の酸素と疲労物質の交換が頻繁に行われて疲労の回復が早くなります。
回復が早くなると他のトレーニングもはかどるので、上達も加速するはずです。
意外と瞬発系トレーニングはしているが、それ以外はしてないクライマーはその他のトレーニングを行うことをお勧めします。