クライミングにおいて、足の使い方が重要なのは誰もが知っている事ではあります。
しかし、ムーブの最中の足の使い方以前に、足そのものの使い方、特に腰から下の使い方について考察してみると新しい発見があります。
今回は、様々な書籍や、クライミングの技術を紹介しているサイトで解説されている足そのものの使い方を、分解して分かりやすいように再構成したものをご紹介します。
これからの解説は前回の記事と合わせて読むことをオススメします。
ボルダリングにおけるフォームの重要性
どんなスポーツでもフォームが重要というのは周知の事実ではありますが、ボルダリングに限っては意外とフォームが重要視されていないようです。
例えば、野球やバレエ等は始めたその日から姿勢やフォームについて徹底的に叩き込まれますが、ボルダリングはジムで各自自由に登るためフォームは個人の裁量に委ねられます。
良くて、知り合いや常連からのアドバイス程度のもので、矯正されるというようなことはないと思います。
これは、ボルダリングが手軽で誰でも簡単に始めることが出来るというメリットに繋がるのですが、逆にフォームを矯正する機会に乏しいことを意味します。
多くのトップ選手は正しいフォームを習得していて、その理由は、正しいフォームの方が登りやすいからという事だけではありません。
故障しやすい手や肩といった小さい部位ではなく、大きな力を出せて故障しにくいボディを使うことで、怪我をしにくいというメリットを得ることが出来るからです。
ある程度上達したクライマーが、フィジカルや保持力を向上させるのは容易ではありませんが、これまで目を向けて向けてこなかったフォームの重要性について考えてみましょう。
つま先以外の部位も意識する
ボルダリングの時、つま先はホールドに乗る時に頻繁に使いますが、つま先以外の部位はいつ使っているのでしょうか。
例えば、次の手が遠くて手を伸ばしてもギリギリ届かない時や、デッドポイントやランジをしなければならない時は、手を出す瞬間にかかとを上げてつま先立ちの状態になると思います。
つま先立ちになるには、かかとを上げる必要があり、かかとを上げるにはつま先以外の部分の力が必要不可欠になります。
試しに、地面でつま先立ちの状態になってみて足を触ってみると、力が入っていることが良く分かるでしょう。
つま先以外の部位は意識できていない事がほとんどですが、上で説明したようなムーブは日常的に行っているので、つま先以外の部位がいかに重要か分かると思います。
足のアーチとダウントゥの関係
足の裏に土踏まずがあるのは誰でも知っていることですが、なぜ土踏まずの様なアーチがあるのか、そしてクライミングシューズのダウントゥとはどんなものなのかについて詳しく知っている方は少ないでしょう。
足のアーチ
足には土踏まずの様なアーチが3か所にあります。
まず、かかとから親指の付け根のアーチ(土踏まず)。
次に、かかとから小指の付け根のアーチと、親指の付け根から小指の付け根のアーチです。
このアーチには
クッションの役割
バネの役割
という2つの役割があります。
ボルダリングにおいては、ホールドを蹴って勢いを殺す時や、ランジする時に勢いを付ける時に使用することになります。
ダウントゥの役割
ダウントゥしているクライミングシューズは強傾斜壁で良く使用され、しゃくれているソールがホールドを掻き込みやすいというのは、良く知られている事です。
しかしこれに加えて、足のアーチの説明を見ていただければ、同じような役割があるのは想像が付くでしょう。
素足のアーチの機能に加えて、クライミングシューズから生み出される力が上乗せされれば、より大きな力を生み出すことが出来るでしょう。
具体的な足の使い方
上では、足とクライミングシューズのダウントゥにはバネの役割があると説明しました。
バネが力を生み出すためには一度縮まなければなりません。
ボルダリング中に足のアーチを使用するプロセスは以下の通りです。
ランジやデッドする前にアーチを縮めて力をためる。
アーチを復元する力を利用して上に伸びあがる。
同時につま先でホールドを蹴り上げる。
つま先で最後までホールドを蹴る。
この動きによって得た力を、足首から足、腰へと伝えれば普段よりも楽に上に伸びあがることが出来ることが出来ます。
下半身との連動
ホールドに手を伸ばそうと足を延ばす時、使われる筋肉は足の裏の筋肉になります。
足のアーチによって生み出した力は、ふくらはぎと太ももの裏を伝って上半身へと伝わることになりますが、姿勢が悪ければ別の方向への力となって、全く意図しない方向へ飛び出してしまう事になります。
ここで重要になってくるのが上半身との連動。
ボルダリングでは、ホールドへ向かって手を伸ばしたり、飛び出する動作がムーブのほとんどを占めていて、その時、ボディの中で最も使われている部位は、お尻と背中です。
これは、実際に手を伸ばす時にボディのどこに力が入っているのかを意識してみるとわかりやすいです。
つまり、足によって生み出された力は、ふくらはぎから太ももへと伝わり、お尻、背中へと伝わっていきます。
これらの部位を意識しながら登ることで、普段より大きな力を使うことができ、楽に正確にムーブを起こせるようになるでしょう。
最後に
アマチュアのクライマーの中では、まだまだフォームを研究している方は少数です。
保持力やフィジカルは確かに重要な要素ですが、太いボディに比べて、細い腕や指というのはあまりに非力です。
そこに頼りすぎると怪我や故障の原因にもなるので、より大きな力を出すことが出来る部位への意識を高めることが、指への負担を減らし、怪我の予防にもなるので上達への近道となります。