①では筋肉疲労(パンプ)のメカニズムについて解説しました。
今回はパンプからの回復、パンプになりにくくする方法について解説します。
前回の記事を読んでいない方はまずは、前回の記事を読むことをお勧めします。
乳酸の排出①毛細血管の発達
前回の記事では、パンプの原因は乳酸であることを解説しました。
厳密にいうと、原因は乳酸そのものではなく、乳酸の発生に伴って生成される水素イオンが原因ですが、パンプ=乳酸と思ってもよいでしょう。
そこで、パンプからの回復手段として、乳酸の排出が重要になってきます。
それには乳酸を速やかに排出するための毛細血管が十分に発達していることが必要です。
毛細血管の発達は、毛細血管を十分開いた状態で、血管壁への圧力を高めることによって促されます。
そのためには、最大筋力の30%以下の力で20分から30分間筋肉を使い続けることが必要です。
これが最大筋力の50%以上の深田と筋収縮によって毛細血管が押しつぶされ逆に閉塞してしまい、毛細血管の発達を阻害してしまいます。
具体的な方法としては、パンプしない程度の軽い強度でのロングボルダ―を10分から20分ほど続けるのが良いでしょう。
この方法は、故障などの休養から復帰する際のリハビリとして非常に有効な手段です。
この方法は別の記事でも詳しく解説しています。
乳酸の排出②乳酸体制の向上
乳酸排出のもう一つの手段として、先に説明した毛細血管の血流による乳酸の除去とは別に、細胞レベルでの乳酸除去方法が存在します。
細胞内には乳酸を筋肉から除去したりする酵素を作りだす役割があるそうです。
この酵素を増やす方法として、パンプと回復を何度も繰り返すことが唯一の方法だそうなので、やはり登りこむことが必要となります。
乳酸発生の予防
乳酸を除去する方法の次は、乳酸を発生させにくくする方法についてです。
これには筋肉のLT値が重要な要素となっています。
LT値とは乳酸発生閾値(しきいち)のことで、乳酸が発生する運動量のことです。
LT値をわかりやすく説明すると、乳酸は運動量が少ないうちは乳酸は発生せず、ある一定の運動量を超えると乳酸が発生しますが、この「ある一定の運動量」のことを指します。
LT値を高くするには
LT値を高く、つまり大きな運動量でも乳酸を発生させないためには、技術的な要素と、神経的な要素の2つに分けられます。
技術的要素
技術的な要素としては、テクニック以前の体の使い方です。
ヒールフックやトゥフックといったテクニックではなく、フォームや力の入れ方といったコツとも呼べる技術的な要素で、使うエネルギーを少なくできれば乳酸が発生することがありません。
LT値を高くするというよりは、そもそもLT値に届くだけのエネルギーを使わない方法になります。
神経的な要素
筋肉は収縮して力を発揮しますが、すべての筋繊維が収縮しているわけではありません。
この筋繊維の稼働率を表すのが「筋稼働率」です。
筋稼働率が高いほど、多くの筋繊維が稼働しているということになります。
この筋稼働率を高めるには瞬発的で強負荷のクライミング、つまりボルダリングが最適です。
瞬発的力を高めるトレーニングについて解説している記事もありますので、そちらもご覧ください。
まとめ
今回は乳酸を排除する方法、乳酸を発生させない方法の2つを解説しました。
乳酸を排除する方法として毛細血管を発達させる=低負荷のクライミング(ボルダリング
乳酸を発生させない方法として筋稼働率を高める=高負荷のクライミング(ボルダリング)
矛盾しているようですが、記事を書いている私も実感がありますし、これを読んでいる方の中にも言われてみればと思った方もいるのではないでしょうか。
高負荷のクライミングは意識せずとも、クライマーであればチャレンジするものなので、低負荷長時間のクライミングからトライしてみてはいかがでしょうか。